5カ国で行なわれた7件の研究をまとめたところ、統合失調症を主体とする精神病者が見知らぬ他人を殺害する頻度は、年間で人口1,430万人に1人ときわめてまれで、加害者の64%はそれまでに抗精神病薬の治療を受けていなかった。論文はSchizophrenia Bulletinのサイトに2009年10月12日掲載された。

研究が報告された5カ国は、英国(2件)、ドイツ(2件)、デンマーク、フィンランド、オーストラリアだった。加害者が見知らぬ他人を殺害した人数は、合計で78人だった。

著者らは、上記の7件の報告とは別に、見知らぬ他人を殺害した42人と、家族を殺害した42人の情報を4カ国から集めて比較した。他人を殺害した42人のうち、それまでに薬物療法を受けたことがなかったのが64%(27人)に上る反面、殺害時に治療を受けていたのは12%(5人)にとどまった。最初の症状の発現から殺人までの平均期間は3.6年だった。

他人を殺害した42人は、家族を殺害した42人と比べて、男性とホームレスが多く、行為障害と一致する既往が多く、成人期の反社会的行動の繰り返しが多かった。

著者によると、統合失調症などの精神病者による見知らぬ他人の殺人は、メディア報道を通じて社会の懸念を生み出し、カナダ・英国・ニューヨークでは、精神科患者に対する治療を義務付ける法改訂が行なわれたり、退院前の患者のリスク評価が推奨されたりしている。

しかし著者らによれば、精神病者による他人の殺害の頻度がきわめて低いことに加えて、患者の大半がそれまで治療を受けていないことを考慮すると、治療の義務付けや事前のリスク評価のような措置は、実りのない試みにならざるを得ないと指摘している。その上で、最初に症状が発現した患者の早期治療や、精神科診療全般の改善によって、統合失調症患者による殺人の発生率を減少させる可能性があると考察している。

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