オバマが、大統領選挙の勝利演説で、平易に国の「統合」と社会的な「包摂」を訴えたことは記憶に新しい。父はケニア人のムスリムで、母が白人、ハワイで生まれてインドネシアで育っている。かれのスピーチのすごさは、この「出自を含めた身体性」を「再統合のシンボル」とするために、従来の敵味方をはっきりさせて〈「敵」を攻撃することで友を確からしくする〉「友敵図式」をほとんど使わなかったことだという。

〈……オバマは出自がそうであるだけでなく、発せられるメッセージもまた「友敵図式」を利用しないのです。より正確に言うと、勝利演説だけが「イエス・ウィー・キャン」であることからも分かるように、「友敵図式」を利用して分裂を深めようとする者たちこそが「米国全体の敵」というふうに名指されるのです〉

 つまり、対立を煽る者と、対立を乗り越えようとする者との対立だ、と言い、〈この逆説を克服できるのは自分だけだ〉と聴衆のイメージに訴える。

 演説はスピーチライターが書いているとはいえ、いまだに安易な「友敵図式」を振りかざすどこかの政治家とは大違いだ。

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